第2話

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「よかった。何度か来たんですけど、返事がなかったんで……」  ヴィリバルトさんが肩をすくめてそう呟く。なので、私は曖昧に笑った。 「今、起きたところなのです……」  誤魔化すように苦笑を浮かべれば、彼は大きく頷く。それから、私のほうに近づいてきた。 「体調どうですか? 昨日酔いつぶれてましたけど……」  やっぱり。眠る前の記憶がないのは、酔いつぶれたからなんだ……。 (見知らぬ人の前で酔いつぶれるって、貴族令嬢としてそれはどうなの……?)  危機感がないどころの騒ぎじゃないだろう。  と思ったものの。私はもうすでに貴族令嬢じゃない。だから、誰かに口うるさく注意される意味もない。  ただ唯一。思いきり迷惑をかけてしまったヴィリバルトさんにだけは、謝らないとならない。 「その、ご迷惑をおかけして、すみませんでした……」  頭を下げてそう言えば、ヴィリバルトさんは「いえいえ」と言って手をぶんぶんと横に振る。 「俺のほうこそ、すみません。勝手に屋敷に運んでしまって……」 「い、いえ! どうせ行く当てなんてなかったので!」  自慢できることじゃないけど。  そう付け足しつつ、私もぶんぶんと手を横に振る。  二人そろって手を横に振っていると、なんだかおかしくなって。私たちは、どちらともなく笑ってしまった。
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