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そうしていれば、不意にぐぅっという音が聞こえて来た。
……その音が私のお腹の音だと気が付いて、顔にカーっと熱が溜まる。
「その、なんでも、なくて」
今にも消え入りそうなほど小さな声でそう言う。すると、ヴィリバルトさんはきょとんとしていた。
その後、今思いついたかのように手をポンっとたたく。
「お腹が空いたのですね。じゃあ、食事にしましょう」
彼はなんてことない風にそう呟くと、私に視線を向ける。
「身支度が整ったら、来てください。食事をする場所は廊下を右に突っ切って、一番奥です」
「……え、あ、はい」
「じゃあ、俺は先に行って待っていますね」
にこりと笑みを浮かべたヴィリバルトさんは、すたすたとお部屋を出て行った。
残された私は、ぽかんとする。開いた口がふさがらないとは、まさにこういうことなのだろう、なんて。
(お腹の音には、触れなかったわ……)
もしくは、触れるのはタブーだと思ったか、だ。
まぁ、触れないでくれたのは素直にうれしかったので、そこに関して私ももうなにも言わないでおこう。
その一心で、私は寝台から起き上がって、部屋をぐるりと見渡す。そして、部屋の隅にある鏡台らしきものに近づいた。
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