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少し深呼吸をして、気持ちを整える。扉をノックすれば、中からは「いいよ」という声が聞こえてきた。
だから、私は一拍おいて、手を伸ばす。扉を開けて、部屋の中をぐるりと見渡した。
(……すごい)
一瞬で、頭の中が真っ白になった。
今まで感じていた緊張とか、戸惑いとか。そういうものを塗りつぶす光景。
シンプルなのに何処か上品な印象を与えてくる室内。部屋の中央を陣取る長方形のテーブル。その周囲を囲むよう四脚ほどの椅子が設置されている。
「メリーナさん。早かったですね」
ヴィリバルトさんがにこやかな笑みを浮かべて、持っていたトレーをテーブルの上に置く。
トレーの上にはバスケットに入ったいくつかのパン。彼はそれをテーブルの中央に置いて、私を手招きした。
「そこに座ってください」
「……あ、はい」
「あとスープとスクランブルエッグがあります。飲み物は、どうします?」
彼が笑みを浮かべたままそう問いかけてくる。
……なんだろうか。私は、いつの間にレストランに来たのだろうか。
そう思ってしまうほどの、好待遇。酔い潰れた結果、仕方がなく運ばれてきた人間に対する扱いじゃない。
「……え、えっと」
「ジュース系統もありますし、紅茶もあります。なんだったら、コーヒーとかも……」
「え、えっと、じゃあ、ジュースを……」
私の言葉を聞いたヴィリバルトさんは、大きく頷いて奥へと引っ込んでいった。
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