第2話

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 そんな風に思いつつ視線を下げていれば、ふとヴィリバルトさんが声を上げた。 「そういえば、これから行く当てはあるんですか?」 「……いえ」  彼の問いかけにゆるゆると首を横に振る。  そうだ。今の私は、そんなことを考えている場合ではないのだ。 (住む場所とか、働く場所とか。探さなくちゃ……)  貴族の娘を雇ってくれる場所なんて、あるのだろうか……?  という不安を抱いて、頬を引きつらせてしまう。 (それに、いつまでも宿を借りているわけにもいかないわ。お金ばかり、かさんでしまう)  ある程度はお金があるとはいえ、一生宿暮らし……なんていうのは、絶対に無理だ。本当に無理だ。それくらい、私にもわかる。  つまり、今私がするべきは。 (お仕事を見つけて、アパートを借りるということ)  ある程度のお仕事があれば、アパートだって契約できるだろう。  よし、決めた。 「ただ、この後お仕事を探して、アパートでも借りれたら……とは、思っています」  パンをちぎりつつ、私はそう伝える。 「しばらくは宿暮らしになるでしょうが、それも仕方がないことですし……」  雨風をしのげるだけ、マシというものだろう。  私が肩をすくめてそう続ければ、ヴィリバルトさんが少し考えこむような素振りを見せた。
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