第2話

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「……実は俺、考えていたことがあって」  彼がお水の入ったグラスを手に取って、真剣な面持ちで私を見つめてくる。 「メリーナさんさえよければ、ここに滞在しませんか?」  ……が、その言葉の意味がすぐには理解できなかった。  どう、いうことなんだろうか。 「え、えぇっと」 「いえ、深い意味はないです。どうせ、部屋は有り余っていますし」  彼はなんてことない風にそう言うけれど、そんな理由で居候するのも、ちょっと悪いというか。 「それに、今すぐに働く場所を見つけようとしても、きっとうまくはいきません」 「……それは、そう、かもですが」  貴族の令嬢が出来る仕事なんて、たかが知れている。彼は、そう言いたいのだろう。 「だから、ここで仕事に就くための練習をするんです」 「……練習、ですか?」 「はい。これでも俺は一人で暮らしていますし。家事系統ならば、ある程度教えられます」  ヴィリバルトさんが、口元を緩めてそう言ってくれる。  長い前髪の所為で、目がどんな感じなのかはわからない。けれど、悪いことを考えているようには思えない。 (そりゃあ、私になにもしなかっただけ、信頼できるんだけど……)  酔い潰れた私になにもしなかった。それだけで、信頼は出来る。
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