第2話

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「初めはなにも出来なくて当然です。ゆっくりと覚えていけばいいんです」  そんなことを言う彼の目は見えない。でも、もしかしたら笑っているのかも……と、思ってしまう。  分厚い前髪の奥にある、素顔。……見たい、と思ってしまった。 (だけど、そんなこと言えるような立場ではないわ)  私だって、自分の立場は弁えているつもりだ。  だから、私はその言葉を呑み込んで。軽く頭を下げる。 「では、その。……よろしく、お願いいたします」  ちょっと戸惑ったような声でそう告げれば、ヴィリバルトさんがほっと胸をなでおろしたのがわかった。 「はい、よろしくお願いされました」 「……なんですか、それ」  それは少し、言葉がおかしいんじゃないだろうか?  そう思って笑う私。ヴィリバルトさんは、少し嬉しそう……に、見える。 「あなたは、笑った顔が可愛いですね。……本当、魅力的だ」  ……が、さすがに。こんなにも突拍子もない言葉には、戸惑う。すぐに反応が出来ない。  ぽかんとする私を、ヴィリバルトさんが見つめる。頬杖をついて、何処か愛おしそうに。 「か、からかわ、ないで、ください……」 「からかってないです。……あなたは、本当に魅力的ですよ。愛らしくて、とってもきれい」  今までは何処か柔らかな声だったのに。そう言ったヴィリバルトさんの声は、力強くて。  まるで、私の中にある負の感情を押し流そうとしているかのような。  そんな声に、聞こえてしまった。
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