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「初めはなにも出来なくて当然です。ゆっくりと覚えていけばいいんです」
そんなことを言う彼の目は見えない。でも、もしかしたら笑っているのかも……と、思ってしまう。
分厚い前髪の奥にある、素顔。……見たい、と思ってしまった。
(だけど、そんなこと言えるような立場ではないわ)
私だって、自分の立場は弁えているつもりだ。
だから、私はその言葉を呑み込んで。軽く頭を下げる。
「では、その。……よろしく、お願いいたします」
ちょっと戸惑ったような声でそう告げれば、ヴィリバルトさんがほっと胸をなでおろしたのがわかった。
「はい、よろしくお願いされました」
「……なんですか、それ」
それは少し、言葉がおかしいんじゃないだろうか?
そう思って笑う私。ヴィリバルトさんは、少し嬉しそう……に、見える。
「あなたは、笑った顔が可愛いですね。……本当、魅力的だ」
……が、さすがに。こんなにも突拍子もない言葉には、戸惑う。すぐに反応が出来ない。
ぽかんとする私を、ヴィリバルトさんが見つめる。頬杖をついて、何処か愛おしそうに。
「か、からかわ、ないで、ください……」
「からかってないです。……あなたは、本当に魅力的ですよ。愛らしくて、とってもきれい」
今までは何処か柔らかな声だったのに。そう言ったヴィリバルトさんの声は、力強くて。
まるで、私の中にある負の感情を押し流そうとしているかのような。
そんな声に、聞こえてしまった。
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