空転衛星

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 私の一部が壊れてしまった。 「ア……お姉さまの首、キリンさんみたいでかわいい。まきついてほしい」  幻をみた。 「ウン……キリンさんか。私は、カバさんのほうが好きなのよね。これは、いけないわね」  どうやら、ミサイル誘導電波発生装置の一部が、ちかくの惑星の磁場の影響で、不調をきたしたらしい。  お姉さまは、私の頭部に機具をさしこみ解体した。  ペンチでいくつかのコードを切り、壊れた部品をとりのぞく。そのあと、予備パーツを私の頭のなかにくみこんだ。  幻はとりのぞかれ、いつものお姉さまの首になった。私はジっとお姉さまの首をみつめた。 「そっちの首のほうが、首をくくる時にラクそう」 「どういう意味よ!」  壊れた部品は、地面で火花を放っている。「まだ、電波を誘導するためのエネルギーは、のこっているわね」  銀色の流れ星が、宙をまった。  よくみれば、星の情報をたくわえる、衛星鳥の一種だった。  丈夫に加工された鉄で作られたものだが、経年劣化により、墜落寸前であった。  お姉さまは、壊れたパーツにいくらかの手をくわえ、鳥に電波をおくりこんだ。  キィと高い声でなきながら、衛星鳥はお姉さまの肩にとまった。尾羽からコードをのばし、お姉さまと接続を開始した。  衛星鳥を呼ぶには、交信システムが必要だった。それは、隊長機である夜式にのみ与えられた機能であったが、私がころんで彼女に追突した時、壊れた。  だから、ひさしぶりの接続。  お姉さまは情報くみ取り作業をおえると、すこし目をつむり「おつかれさま」と鳥にいった。  鳥は、バラバラと音をたてて、こなごなになった。 「鳥さんはなんていっていたのぉ? エンブレムからして、私たちの星にも、とんでいたヤツだよね」 「博士のラボの近所に、おいしいお寿司屋さんができたそうよ。博士の安月給でも、おそらくお腹いっぱい食べることができるでしょう」 「私は焼き鳥っていうの食べてみたいです。この鳥さんは、固そうなお肉だから、食べたくない」まぁ……私たちに食事は必要ないし、不要なたんぱく質を機内にとりこめば、不都合なエラーの発生要因にもなる。 「夕のなかにあった、この送電用デバイスは、まだ、利用価値があるようです。あなたは、暇をもてあましているようだから、今日からこれをつかって、ラジオを放送しましょう」
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