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明日は必ずやってくる
▼『明日は必ずやってくる』
月並みな言葉かもしれない。
それでも今、伝えたいんだ。
どんなに夜の闇が深くて不安に押し潰されてしまいそうだとしても、生きている限り、明日は必ずやってくる。
明けない夜は無い。
陽は、また必ず昇るから。
「所詮、偽善者たちが紡ぐ綺麗事だ。そんな希望など、物語の中の世界にしか存在しない。人の善意を利用して悪意をばらまく、それが人間の本質だ」
「違うっ、そんな人間ばかりじゃない!」
世界の終焉へと進み続ける終末時計の時間が止まらない。
だけど、私は負けない!
「怪人チョミラスパベリバ、あなたの思い通りになんてさせないわ!」
だって私は、世界の運命を託された魔法少女――。
――――
――
「……い、起きろ。いい加減、起きろってば!」
もふっとした何かが私の頬をむにむにとつついている。
「何の夢を見ているのか知らないが、このままだと朝ごはんを食いそこねるぞ?」
……朝ごはん……を?
「それはヤダっ」
飛び起きた私の視界を埋め尽くすように、ぬいぐるみのような見た目の猫がそこにいた。
空のように青い瞳が、呆れたように私を見つめている。
耳の毛は黒いけれど、全体的に白い毛。ふわふわでもふもふの毛並み。ただ、普通の猫と違って二頭身で背中に鳥のような翼を生やして宙に浮かんでいる。
「なぁコトリ、『怪人チョミラスパベリバ』って何だ? この間の寝言で聞いた、『怪人げきおこぷんぷんまる』の仲間か?」
こてんと首を傾げて問いかけてくる様子がかわいいけれど、そこはつっこまないでほしかった。
「さ、さぁ? わ、私そんなこと言っていたんだ?」
夢の中で魔法少女になっていて、悪の秘密結社が生み出す怪人と戦っていたなんて言えない。
「そ、それより朝ごはんの準備をしよう? ニャーくんは何が食べたい?」
「たい焼き!」
「おっけー、魔動解凍機にセットしておくね」
私は話題を変えて寝室から逃げ出した。
魔動冷凍庫から冷凍たい焼きを二人分取り出して魔動解凍機にセットしてから、朝の準備をして魔法学校の制服に着替える。
私の名前はコトリ。相棒はニャーくん。
全寮制の魔法学校を舞台にした乙女ゲームの世界に前世の記憶を持って転生してしまっているモブです。
前世の年齢?
既に死語であろう『チョミラスパベリバ』を知っている時点でお察しくださいな。
※チョミラスパベリバ……『超ミラクルスーパーベリーバッド』の略で、『げきおこぷんぷんまる』同様、とにかくめちゃくちゃ怒ってるって時に使用されていた言葉のようです。
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