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決勝戦。多くの歓声の中、先鋒のシャオランが前に出る。いや、係員に無理やり引きずられていた。前回同様、先鋒、中堅、大将はじゃんけんで決めていた。
「やだー、怖い~」
シャオランが泣き喚いていた。
勝負始め。
「嫌だ~、りんりん助けて~」
口寄せの術で呼び寄せたりんりんが、弾かれたように伊賀の先鋒に飛び掛かる。決勝の相手は伊賀。この伊賀も先鋒が封魔の3人を一人で片付けていた。筋肉隆々のイカツイ男。男はりんりんをさらりとかわすと刀を抜いた。
『早いな』
見た目の可愛さからは想像できないほどのりんりんの低い声。すぐにまた飛び掛かる。そのスピードは先ほどのものとは比べ物にならない。
「ギアがあがった?でも、パンダごときのスピード、話にならない」
男は消え、いつの間にか襲い掛かったりんりんの背後にいて、刀を振り下ろしていた。
ゴキン
男の足が折れ曲がり、骨が飛び出していた。りんりんはいない。
『褒めて』
シャオランの前でりんりんがお座りをしていた。
「りんりんありがとう。」
そういってシャオランがりんりんの頭を撫でるとりんりんは消えた。
勝負あり。
二人目、酷く汚らしい猫背の男。
「りんりん、またお願い」
試合開始の合図と同時に、男は10体に増える。影分身。影分身をした9体をりんりんに向かわせ、本体である男がシャオランを襲う。
『皆、それをやる。その対策がないわけなかろう』
りんりんが消えて、シャオランの目の前に現れた。
『我は常にシャオランと共にある』
男の刀を右手で薙ぎ払うと、返しの左手が腹部に吸い込まれ、男は鈍い音とともにくの字に折れ曲がって意識を失った。
勝負あり。
3人目が現れると場内はざわついた。伊賀のクランの上忍、しかもナンバー忍者と呼ばれる精鋭。ナンバー参。どの里でも名前が知れている歴戦の忍者、人斬り才蔵。
勝負始め。
「あのパンダはちょっとやっかい。いなくなってもらおう」
りんりんの周りに檻ができ、動けない。シャオランのもとに瞬間移動することもできなくなっていた。
『バカが』
りんりん、半ば諦めたような態度でつぶやいた。
「さあ、お嬢ちゃん、おじさんは子供を殺すのが好きなんだ。シーネ」
才蔵のクナイが放たれる。
「キャー」
シャオランの腕から一筋の血が垂れた。
「ん?全て急所に突き刺さるよう放ったはずだが」
少しの疑問を抱きつつも、才蔵は目にも止まらぬ速さでシャオランの背後に回り込み、首を締めあげた。
「苦し…」
丸太のような太い腕に爪を立てるシャオラン。その爪から細い煙が上がり、小さく黒い炎が丸太のような腕から噴き出した。
(熱っ)
才蔵もたいした男、手を離すと同時に脇差を抜いてシャオランの心臓に突き刺していた。が、空を切る。シャオランは小さくしゃがんでいた。才蔵は飛び下がる。大きく距離を取ろうと後ろに下がると、
とん
何かにぶつかった。振り向くとそこには笑顔のシャオラン。その目はうつろで、全身から熱気が見えていた。手元には黒い炎を宿している。
『儂はな、』
りんりんがつぶやく。
『シャオランを守るためにいるのではない。シャオランの強さをセーブするためにいるのだ。儂はキレ味抜群の呪われた妖刀の鞘でしかない』
(逃げっ)
才蔵が消える、数百の影分身を残して。が次の瞬間、シャオランが黒い炎を地面に押し付ける。辺りが黒い炎で覆われ、才蔵は倒れた。
勝負あり。
シャオランの3人抜き、よって甲賀のクラン、優勝~。
「えぇ~、私の活躍は??」
咲夜がちゃっかり自撮り棒で撮影しながら叫んだ。
「忍ばない忍者咲耶、チャンネル登録よろしくね♪」
(終わり)
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