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『予断を許さない状況だ。
会わせたい人がいたら呼んだ方がいいかもしれない。』
恭くんの同級生の光先生が声を落として言った。
友達だからこそ遠慮も建前も無しに告げてくれる。
目を見開いて佇む恭くんの肩を叩いて、静かに病室から出て行った。
恭くんはゆっくりとベッドの横の丸椅子に座り、左手で左手を握る。
結婚指輪と指輪が微かにカチっと音を立てた。
『誰に会いたい?
とりあえずお母さんと…』
声に出さないと正気を保てないのかもしれない。
私たちの心のように雨が降り出した。
こんな思いをさせてごめんなさい。
全部聞こえてるの。
見えてるの。
だからお願い。
誰も呼ばなくていいからここにいて。
手を離さないで。
私は必ず戻るから。
1秒前も
1秒先も
会いたいのなんて あなただけ。
お願い、伝わって。
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