独身無所属の一夜

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 猫が一辺倒のあそびに飽きて再び鳴き始めた頃、お湯の嵩を確かめに行くとちょうど良い高さの8割程度だったので引き返した。猫はその場に残り、浴槽の縁に乗り、お湯が溜まっていく様子を眺めていた。お湯の近くでぬくいのであろう。  お風呂のあとに夕飯にしようとおもっていたが、空腹に耐えかねて1200円の寿司の蓋を外そうとするとセロテープで固定されており動かない。慎重に蓋を外し、そこに付属の醤油とわさびを入れた。猫がお寿司に近づいてきて、眺めていた。一人で食べるときの習慣で食す前にリモコンをとり、手は自然とYou Tubeを立ち上げたのだが肝心の動画は今ひとつの物ばかりてある。仕方なくいつも見ているチャンネルのあまり面白くはなさそうなシリーズ物を開く。それは芸能人がインタビューアーからの100個の私生活に関する質問に一問一答で答えていく動画であったが、質問がファッションの嗜好に巧みに誘導されていき、やたらと特定のファッションブランドを褒める宣伝動画に変化していった。その服は、ユニクロの服にブランドロゴがやたらと大きくプリントされているだけのものに見えた。  そうこうしているうちに、お湯はりのことを思い出して浴室に向かうと浴槽から溢れそうなほど湯が溜まっていたので慌ててすぐ止めた。この僅かな時間に、食べかけのお寿司が猫に食されていないか心配になり慌てて振り向くと猫は毛布の上で目を半分閉じて香箱ずわりをしていた。  洗面所兼トイレにて脱衣していると猫が扉を開けてほしいらしく、ドアにつめを立ててカリカリするような音を立てている。私は仕方なくドアを開けると猫は洗面台に上がり何かを待っている。私が蛇口をひねると猫はそこから流れる水をチロチロと舐めていた。私は鏡で自分の姿を見ることは好きではないが、、、仕方なく鏡を見ながら、100均で購入したメイク落としで顔全体を拭いているとクマとやつれた人相が現れた。
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