独身無所属の一夜

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 なだれ込むようにして鍵をあけて自宅に戻った。出先で困らぬよう大きなポーチを持ち歩いているからか、矢鱈とバッグが重かった。床に投げるとドカンと音を立てた。このバッグは何の気なしに10年ほど前に購入したものであり、ショッキングピンク、赤などのハートが全体にプリントされている派手なもの。カジュアル過ぎるのでキレイなコーディネートには不向きなうえ、唯一のプライベートリュックであるために、もう一つ購入しようと思っているのだが中々重い腰を上げられずにかなりの時間が経過した。  さて、コート着衣のまま、寒いお風呂場にいき、浴槽めがけて黄色い洗剤を放った後、ニトリで購入した柄の長い風呂掃除専用モップで浴槽全体をなぞり、シャワーで流し終わったあと、蛇口のレバーを手前に引くとドボドボと勢いよく水が出る。  ここまで足早に行動した後、緩慢にコートを脱ぎ、マフラー、耳あてを取り外し、、、冬の脱衣はやたらと時間がかかる。お湯が浴槽に貯まるまで時間があるからセーターの上にハンテンを着たあと、ぬくい暖房の部屋に入る。まずは敷きっぱなしのヨガマットの上に座ったが、スーパーで購入した1200円の少し高級なすしと、ほろよい、諸々のおかずを冷蔵庫にうちやる。また元のヨガマットに戻ると何か窮屈な感じがして、ブラトップを身に着けていることに気が付き、セーターとタートルネックを一どきに脱いで、少し汗臭いブラトップをマットの上に捨て臥せた。帰宅直後より大声で鳴いている猫を黙らせるべく、寝たままの姿勢で手近な猫じゃらしー黒い棒の先に黄色い毛虫のような糸の塊が付いているもの、最もこの毛虫の大部分は経年変化により消失していたがーをとって暫し猫と戯れた。
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