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※嘔吐表現あり
けど、まあだいぶ限界だったんだろうとは察する…家に着いた途端、佐野はトイレに駆け込んで、白い陶器にしがみついた。
「うっ……けほ、ぅえっ……」
「くるしーなぁ、昼食ってねェの?」
時刻は夜中の1時、昼ってより夜か。
今日学校行ってねぇから、よく分かんね。
けど、佐野の口から出るのは水分ばっかだし、あの辺は飯食うとこないしな。
「佐野、水飲むか?俺口つけたやつだけど」
「んっ、ぅくっ…ゴクッ、ゴクッ…ッゲホッ…!ぅ、げっ…ハァッハァッ……」
「ちょっとはマシんなった?移動できそ?」
「はぁっ、はっはぁ…ウゥッ……」
結構重症だな、これ。吐いただけでHP0かよ…
佐野のくせに俺より身長高いんだもんな、運ぶのも一苦労だ。
水を流して、ほとんど意識のない佐野を抱えて寝室のベッドに打ち上げる。
体温計、って買ったっけな…お、俺すげーじゃんちゃんとあったわ。虚しい独り言も、どうせ佐野には聞こえていない。
印鑑とか筆記用具が雑多に入った箱から体温計を取り出し、脱力した佐野に腕をとって、それを挟み込んで上から押さえる。
「ぅ、っめ、ッ……」
「あー悪い、」
つか反応おそ。
暴れんな、ちゃんと測れ、っ…?!
気づけば、体が仰向けの状態で廊下に出ていた。
背中と、後頭部と、深夜のLEDは目に痛い…幸い現実逃避は得意だ。
「HP0のくせに、どんな馬鹿力…」
「うっ、ぁ…ハァッハァッハッ……」
「チッ、面倒くせぇな…佐野、起きろ。大丈夫だって」
目を瞑ったまま上体を起こして、胸を掻きむしる佐野の手を、力づくで押さえつけて背を摩ってやる。
何と勘違いしてんのか知らねえけど、看病してるこっちが怪我したのでは意味ないし…あー後でなんて言い訳しよ。
まともに挟めないのなら、起きて自分で挟んでもらうしかない。背を摩り始めて5分ほどで、佐野は正気を取り戻した。
「かわ、も……」
「気、付いた?俺色々準備してくっから、自分で熱測れるか?」
「……」
おーすっげぇ悔しそうだな。
まあ問題児の俺に看病させてるわけだし、分からんでもないけど。
不服そうな顔をしながらも頷いてくれた佐野の手に体温計を握らせ、一旦寝室を出て諸々の用意をする。
解熱剤と、熱さまシートと、ボウルと袋と飲むゼリーと…ティッシュと、一応電気ヒーターもっと…こんなもんかな。
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