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「佐野、どうだ…おーい」
「ぁ…ご、め…はか、なか、った」
「あー、まあいいや。今寒い?」
「…ん……」
「…じゃ、ヒーターつけるな」
真っ赤な顔で、とろんとした目で頷くだけで可愛いなんて、何考えてんだよ俺。
さっき蹴られた相手、それも佐野は3つ以上も歳上のおっさんだぞ?俺も佐野の風邪もらって幻覚でも見たか?
ヒーターの電源を入れている間、佐野はずっと、ぼーっと虚空を見つめていて、いよいよ本気で心配になってくる。
「佐野、これ何本に見える?」
「…さん、じゅう」
「片手でそれできたら俺何?」
やべー、さっさと薬飲ませて寝かせるべきだ。
一応断って(蹴られたら嫌だから)佐野の上体を起こし、
ゼリーの蓋を開けたやつを口元に持っていくと、ちゅって…
あ、これ錯覚じゃねえかも。でかい男がゼリー飲んでるのってこんな可愛いもん?
「佐野、その調子で薬飲める?」
「……せぃ」
「ん?悪いなんて?」
「せんせい、おれ、せんせい」
「っ…そ、か…そーだよな。じゃほら、佐野せんせーお薬飲んで?」
「ん…ぁ……」
なんだそのプライド…可愛すぎかよ。
そんで、なんで口開けてんの?入れろってこと?
うわ、みっともな…指めっちゃ震えてるわ…
「苦くなる前に飲み込めな?それで熱下がると思うから」
「ん、ぅ…う、」
「あーほら、飲んで…ん、よくできました」
「…うるさい」
ちょ、ちょっと待て…さっきから佐野が可愛くて仕方ないんだが?
俺も含めた悪ガキ相手にいつもきょどってるアンタはどこに消えた?
人の指吸って、苦くなって泣きそうになって、挙句に俺に反抗までできるんだ?
「せんせー…見直した」
「…?」
「それ、最後まで食えそ?食えたら歯磨きしてやるからもう寝よーな」
「ん…かわも、は…?」
「俺も仮眠取るけど…一緒に寝る?」
「…ぅん」
うわ、うわー…プライドと相談したんだよな。
でも1人じゃ不安だったんだよな、分からんけど、可愛いわ。
小さい口を泡でいっぱいにして、
寝る時に遠慮がちに抱きついてきたりして、
あれからも佐野は俺相手に可愛いの押し売りをし続けた。
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