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「…も、かわも、起きろ」
「ん…?あーさの…?どした?」
「トイレ、どこ」
「あー案内する、ほらこっち」
「ま、待て.」
そう言えばここからトイレまでの行き方教えてなかったよな、と身体を起こす。
寝てからそんなに時間経ってないと思うけど、掴んだ手はそこまで熱くない。
薬が効いているようで安心はしたが、その割にはまだ眩暈と頭痛があるようで、佐野はきつく目を瞑っている。
「吐く?」
「ぅ、吐か、ない…はら、いたく、て…」
「腹?」
緊張してんのかな、つか今まで寝れてなかった?
うわー悪いことしたな…俺よっぽどのことなきゃ飽きねえんだよな。
「んっ、ぅ……」
「行けそ?」
「ん……」
「じゃあほら、ゆっくりな」
身長高いのに子供みたいだな、かわい。
2人でよちよち歩いてトイレに到着、ズボン下ろそうとしたら叩かれた。
佐野が閉めろって言うから閉めたけど、大丈夫かな?てか、佐野のやつ遠慮がなくなってきたな。
まさかあの根暗陰キャが前髪上げたら、可愛いイケメンとは…世の中分かんねえな、なんて…ねむ、佐野遅い…
「佐野、せんせ?終わった?」
「ん…んんっ……」
「まだ痛い?他所の家だから緊張してんのかも。一回布団戻ろ?」
「…やだ…かわもは寝てい、から……」
「んー寝られねんだよな、毛布持ってくるからここで寝る?」
「んん……」
えぇ、可愛いけど面倒くさいな。
だからってほっとくわけにもいかねえし…
こうなったら子守唄作戦といくか、歌声には自信がある。
「せんせ、眩暈きついな〜ほら、目ェ閉じて?ねんねんころーりよ〜、おこーろりよ〜」
「う…うぅ、ん…」
効果すご…ちょっと予想外だわ。
え、ここにいるデカいのって赤ちゃんだっけ?
「はるちゃん、ズボン履いてお布団行こ?」
「…ぅ、ん」
は、はるちゃん!めっちゃ可愛い…
君なら食っても美味いかも…ってやべえ、寝不足のテンション怖…
とりあえず、もう一回よちよちって、これもう意識ないな…はぁ、しくった。
で、翌朝早朝。
「せんせ、俺バイト行くからさ、離して」
「だって君、絶対言いふらすでしょ」
「だから言わないってば…」
信用ねえな…まあそりゃそうか。
でもこいつ、いつもと全然違うじゃん。
俺捕まえてる手も、声も全然震えてないし、開き直ったって感じだな。
「ねえほんと遅れるからさ…じゃ、今度なんか奢ってよ。それでチャラ、な?」
「…そもそも、学校よりバイトを優先」
「あーなんで急に生徒指導しだすわけ?ちゃんとせんせーの授業は受けにいくよ。あと、朝飯作ってあるから食ってね?鍵は学校でもらうから。じゃ」
これでせんせーの部屋に行く口実ができた。
安心しろよ、あんな可愛いアンタ、誰にも見せたくねーし。
っと、古典は確か2限だったか…ギリ間に合うかな。これからのシフト調節しなきゃなー
「川茂!気をつけて、絶対来いよ」
「…はは、せんせーこそ気をつけなよ。まだ微熱あるんだから」
なんであそこでぶっ倒れてたのとか、
なんでそんな陰キャ演じてんの、とか。
訊きたいこと、いっぱいできた。初めて他人を知りたいって思った。
後2年でアンタのこと暴いて、絶対に俺のもんにしてやるから、覚悟してろよ、せーんせ。
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