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「…佐野、」
「っ…はぁ、はぁ……」
「何余計なことしてんの。カッコつけたつもり?結局倒れてんじゃん、カッコわる」
「……」
川茂が何をしようとしているか、一瞬で分かった。
憂さ晴らしに人を煽って痛めつけて、満足感を得る。
でも、そんな方法じゃ、何にも解決しないことも、きっとこいつは分かってる。
川茂はまだガキだ。
大人に守られてなきゃいけない年頃。
でも、それを認めるのは悔しいんだろう。
自分は弱くない、1人でも生きていけるって、証明してきたつもりなのかもしれない。
でも、こんなことをするのは間違いだ。こんなことを続けていれば、いずれ本当に捻くれる。
戻れなくなるのを、こいつはまだ知らないから、涼しい顔で人を傷つけられるんだ。
「こんなの、生徒にやらせるよりマシだ」
「生徒?俺の本性知ったうえでよくそんなこと言えんな。あ、それとも俺の生い立ちでも知って同情してんの?やめろよきもちわ」
「誰が同情なんかするか、テメエが1番不幸だなんて思うなよ…今日はもう帰れ、自粛しろ」
「……」
言って、響かない人間ではない。
自分のことを分かりすぎているから、それに忠実になろうとする。
だって、それが1番楽だもんな。自分の感情に忠実に、でもガキと違うのは泣くことができないということ。
泣けないから、心から笑えないし、イラついて当たるしかできない。難しいことだが、それを抑え込まなければこの先成長なんてできない。
「なんてな、俺自身、身体壊さねえと分かんなかったもんな」
はぁ、明後日どんな顔して会えばいいんだか…
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