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「でもよかったな、やっと別れられて。そいつ、金無いくせにパチンコばっかやってるクソ野郎だって言ってたもんな」
「うっ……ぱ、パチンコはシンくんの唯一の息抜きだって言うから止められなかっただけだもん。それに、まだ別れてはないよ」
「はあ!? 何やってんだ、さっさと別れろよ! ただでさえクソのくせにまた浮気してたんだろ!?」
おにいちゃんの言う通りだ。
パチンコに使っちゃって金無いんだー、と笑うシンくんに、何度お金を貸したか分からない。今日は勝ったから俺の奢りな、と食事に誘われてわくわくしながらついて行ったら、ショッピングモールのフードコートで390円のかけうどんをドヤ顔で奢ってもらったことも記憶に新しい。
――いや、もちろんうどんは美味しいんだけど、今コレじゃなくない?
そんなモヤモヤを、わたしはシンくんではなくおにいちゃんにぶつけた。その時もおにいちゃんは苦虫を噛み潰したような顔をして「とっとと別れろ」と言っていた気がする。
そして一ヶ月ほど前、シンくんはバイト先で出会った年上の女性となんやかんやで良い感じになったらしく、それはもうあっさりと浮気をした。わたしとシンくんがデートしている最中にばったりその人と出くわし、「誰よその女!?」というテンプレのセリフをお互いに発したことで浮気が発覚したのだが、そんな修羅場を味わったくせにシンくんはまたも他の女性と関係を持ったのだ。
ちなみに今回は、カフェでデート中にシンくんがスマホを置いてトイレに行った際、タイミング良く(悪く?)浮気相手からのメッセージが届いた瞬間をわたしがうっかり見てしまったことで露見した。
またお泊まりしようね、なんてあからさまな一文を見てしまったわたしは、シンくんがトイレから戻るのを待たずにお会計を済ませ、その足でこうしておにいちゃんに愚痴りにきたというわけである。
「おまえさあ、そこで『また浮気したでしょ、別れよう』って言えば済む話をなんで一旦持ち帰ってきたわけ? まさか別れたくねーの?」
「う……そういうわけじゃ、ないけど。二回も浮気されたら、さすがに信じられないし」
「じゃあなんだよ」
鋭い目でこちらを見るおにいちゃんから目を逸らす。なんだか言いづらくて、ぼそぼそと言い訳でもするかのように口を開いた。
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