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寝ぼけてた木佐さんが悪いのよとにらむと、彼はきまり悪そうに髪を掻き上げた。
「そうだったんだ? 朝弱くてさ」
そうした仕草もさわやかで、あんな変態な人とはとても思えない。
営業部の階に着いて、木佐さんは「また連絡するね」とささやいて、去っていった。
(『また』……)
やっぱり一度では終わらないようで、私は覚悟するように目をつぶった。
その週はそれ以来、木佐さんに会わなかったし、連絡も来なかったのに、週末に呼び出されて、一緒に食事をとった後、また彼の家に連れ込まれた。
「葵、今日はやけに感度がいいんだね」
将司さんに言われて、ハッとした。
いつものホテルでお互いシャワーを浴びて、ベッドで抱き合った。
将司さんが足りなかった私は、彼に身体をぺっとりくっつけた。
顎をすくい上げられ、キスされる。
(木佐さんとしてないのはキスだけだわ……)
押し倒されて、バスローブの上から胸を揉まれた。
将司さんの手が下半身をまさぐって、ショーツの中に入ってきたとき、すでに濡れているのがわかったみたいで含み笑いをされる。
木佐さんの愛撫のせいで、感じやすくなっていたようで、いたたまれない気持ちになった。
(奥さんを裏切っている将司さんに、将司さんを裏切っている私……)
こんなの、よくない。
愛撫されながら、痛切に思った。
ショーツを取り去り、中をほぐすと、将司さんが入ってくる。
どうしても木佐さんと比べてしまう自分が嫌だ。
いつものように事を終えると、またシャワーを浴びて、身づくろいし、ホテルを出た。
「それじゃあ、お疲れさま、宇沙見さん」
「お疲れ様です。また来週」
将司さんはいつもの係長の顔に戻って、手を上げた。
彼の去っていく後ろ姿を見つめていたら、腰に手を回された。
「いつも同じ時間なんだね」
艶っぽい声が耳もとで響き、振り向くと、にっこり笑う顔があった。
「木佐さん!」
「じゃあ、行こっか」
腰を持たれて、彼の家まで誘導された。
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