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さわやかな笑顔に隠された欲望を思い、身を震わせた。
それでも、この状況は自業自得だった。
下着姿でベッドに腰かけ、うつむいてたら、顎をすくい上げられた。
視線の先には、目を細めた木佐さんがいた。
まだ湿った髪が額に下りていて、バスローブ姿がやけに色っぽい。
「最後は俺に脱がす楽しみを残してくれたんだ?」
「違います!」
含み笑いをされて、ブンブン首を横に振る。
木佐さんはそれに構わず、私の髪をひとふさ手にとってなでるように梳いた。
「まっすぐで綺麗な髪だね」
私の髪は直毛で、パーマもカラーもすぐ落ちてしまうぐらい。
仕方ないから、真っ黒の髪を肩下まで伸ばしている。
──葵は本当に髪が綺麗だね。
そう言って優しい手が髪を櫛ってくれたのを思い出してしまう。
慌てて記憶に蓋をすると、木佐さんが隣に座ったところだった。
彼はもう一度、私の髪を手にとり、今度はそれに口づけた。
「宇沙ちゃんのこの黒髪に白い肌が映えて、グッとクるよね。さわってみたかったんだ」
いきなり顔のそばに熱い瞳があって、私は固まったまま、木佐さんを見つめた。
トンッ
予告もなく押し倒された。
ぱさっと髪がシーツに広がる音がした。
木佐さんが乗り上げてきて、両手を私の頭の左右についた。
彼の端正な顔が下りてきて、キスされると思った瞬間、ギュッと目を閉じた。
木佐さんの吐息が顔にかかった。
なのに、唇にはなにも触れず、耳もとに口づけられた。
驚いて目を開けると、木佐さんは男の人にしては繊細な長い指で、私の髪を耳にかけると露出したそこを舐めた。
「あ……」
生温かい舌が耳殻を沿うように移動していき、ゾクリとする。
ペロペロと耳を穴の中まで舐められる。
「あ、あ、ん……」
ただ耳を舐められてるだけなのに、ゾワゾワした身悶えするような快感が湧き起こって、慌てて唇を引き結ぶ。
「感じやすいね」
ふっと笑った吐息が湿った耳にかかって、それも刺激になって、身をすくめる。
(感じやすいはずないのに)
将司さんによると、私は感度が悪いらしい。
耳を堪能した木佐さんの唇は、首すじを這っていった。
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