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○月○日 帰京
"こんなもの、多分もう一生乗らないだろうな。"
そう思い朝から長距離バスでの移動の末、夕方東京に戻った。とりあえず、今晩だけでも寝泊まりできる場所を探そう。
マサオはある場所を思いつき、脇目も振らずにも進んだ。知人とニアミスする可能性を秘めているにもかかわらず、とにかく進んだ。
運良く誰にも会わずにたどり着いたのはとある運動公園。
ここの草っ原はよく近くの住民がピクニックを、夜中は学生達が遅くまで酒盛りをしていたのが記憶に残っていた。
着いた途端、マサオの目に入ったのはレジャーシートを広々と広げて酒盛りする学生たち。
"思った通りだ。これなら今夜だけでなくしばらくはいける・・・"
そう確信したマサオ。
年季の入ったキャリーケースから、自宅から持ち出した毛布一枚、長座布団を敷き、隅の方で眠りに入ったその時。
キキー!!パッ!
マサオの目に強い光が入る。
目をやると警備員か管理者が自転車のライトを横たわる男の顔面めがけて向けている。
とにかく無言に、マサオは観念しその場を離れた。
「せめて何か一言あるだろ。あいつ、長生きしないな。」
野垂れ死ぬ事を考えてる男が口にしない様な事を愚痴りながら、マサオは公園を出た。
小一時間ほど歩いたか、ビル街の中心にマサオはいた。
ふと目をやると公道の隅に建ち並ぶ段ボールとブルーシートで作られた物体の数々。噂には聞いていたけど、何故こんな所に?
よく周り見たら地下道とまでは言わないが、ビル街と自然公園をつなぐ通路で、坂の下りきった部分に位置しており、その真上に公共の広場が存在している。
更には駅までの地下道の入り口に位置し、よほど台風など来なければ多少の問題は仕方ないとして、急用で街まで出るにはなにかと便利だろう。
"ここ、撤去とか言われそうだけど言われてない様子か。雨風凌ぐには丁度いい・・・よし、いけるな。"
マサオはそこに居を構える事にした。
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