83人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
ゴリラの理想の嫁
あの女が来てから、俺の周りは常に騒がしい。
最初は、女詐欺師かと思ったが、見ているウチにそんな器用なことが出来るタイプじゃ無いと気がついた。
外見は、一級品だ。華奢な体は雄の庇護欲をそそるし、小さな顔には性格に似合わない品の良いパーツが収まっている。
本当に楽しそうに笑う顔は、とても愛らしい。居るだけで周囲がつい見ていたくなる存在だ。だから、無駄に揶揄いたくなる。
それに、かなり辛辣な事を言っても、まったく意に介せず笑っている所も肝が据わっていて、面白い。
あの男共が熱を上げるのも納得だ。
(まぁ、俺には関係ない話だけどな、アイツが誰とどうなろうと……)
だが、つい性格的に放って置けず、自分から問題に頭を突っ込んでしまった。
明らかに面倒ごとの匂いがするチンパンジーを拾っちまったし、面倒見ちまっている。
更には、危ねぇ黒い仕事にまで手を出しちまうとは……まぁ、清廉潔白には生きて来てねぇけど……笑うしかねぇな。
「解体だけど最初から作業床付きの二側足場にすんだろ?」
ポンこと、ビーバー獣人の大工の海狸が作業現場に向かうバンの中で聞いてきた。
「あぁ、前面と右側面だけ残してぶっ壊して、都合良く整えろだとよ」
「飛んでもねぇ仕事だな、こりゃ」
貰った依頼書を見るとため息しか出ない。
「報酬もとんでもねぇけどな」
いつもの仕事と桁が違う。それだけやべぇ仕事だからだ。
「この仕事……アレだよな、申告に載せねぇのか?」
ポンが悪い顔をしている。
「後に、正規の別の依頼がくるらしいぞ」
「はー、まぁ……良いけどよ。それにしても、なりゆきは、凄ぇ女だな」
ポンがゲラゲラ笑っている。
「……疫病神も良い所だ」
「あー?お前の理想の女じゃねーか」
「何処がだ!」
思わずでけぇ声で反論してしまった。
「お前の事を振り回して尻に敷く、やべぇ女だろ。そうそういないだろ」
「勘弁しろ。あんなのお断りだ」
最初のコメントを投稿しよう!