大根を摂取する勇気

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大根を摂取する勇気

ソウンさんとお付き合いを始め、正式に番になって、一ヶ月。私達は、割と健全な交際を続けていた。と、いうのも、更紗先生がソウンさんに「性交渉は、くれぐれも慎重に!」と釘をさしてくれたらしい。  私の方も、その話を更紗先生から聞かされたときに、同時に恐ろしい事を教えて貰った。  そう、狼獣人の性生活についてだ。  まず、やろうと思えば一晩に何回も可能。平均三回~五回。メスがその気なら、毎日それが二週間程度もあり得るとか。よく分からないけど、どんなにソウンさんの事が好きでも毎日したいかと聞かれると、ハッキリとノーと思う自分は淡泊なタイプなのだろうか。勿論、スキンシップとかイチャイチャは毎日したいと思う。 「ノエ、とにかく好きにさせちゃ駄目よ」 「そ……それは、どういう意味でしょうか」 「……まず、体格差を考えて。あの狼獣人の中でもデカイあの男と、人間の貴方ではサイズが違い過ぎると思うの。しかもね、狼獣人、ノエの中に入ってから育つから」 「育つ?」 「育つの。アレが中に入ってから本領発揮して、バナナが大根になるの」 「バナナが……大根⁉」 「そう、しかも、抜けないように亀頭球ってのが……まぁ、とにかく……枕元にスタンガン、いやノエも危ないから、ナイフ? んー、ちょっとくらい刺されてもアイツ平気よね……」 「ちょ! ちょっと待って下さい! 物騒、物騒です!」  スタンガンにナイフって、私とソウンさんは何をする予定なの?  最近、ちょいちょい思うけど、獣人世界って、結構バイオレンスだ。 「よし、物理攻撃より、精神攻撃の方が効くと思うわ。とりあえず、ベッドの上ではノエが上官で、ノエの言うことは絶対。そう言いなさい。指示があるまで勝手に動くな。動いたら……ウチに家出するって言いなさい」 「あの……だから、一体私達は何を……こう、ふわふわっと嬉し恥ずかしい、夜のスキンシップをするのでは?」 「……甘いわ。良い? 肉食系獣人とのソレは、戦いよ。バトルなの」 「……したく、なくなってきました」  ソウンさんと戦いで勝てるわけがない。私なんて一ひねりだ。 「あー、ごめん。怖がらせたい訳じゃ無いの。ただ、ちゃんと言うことを聞かせて。絶対的な、貴方の優位を保って、安全に楽しんでね」 「……」  すっかり怯えた私は、夜は自室に籠もった。 「あれ? スマホ忘れた」  明日はお休みだし、動画三昧を決め込もうとしたら、スマホがない。恐らく、リビングのテーブルに忘れたのだろう。どうしたものかと、頭を抱えて悩んだ。  リビングには、ソウンさんが居る。そう、ソウンさんは夜、リビングに常駐している。寝るまでリビングに居るのだ。そして、今日は天崇さんは夜勤で不在。 「非常にまずい」  スマホのことは、綺麗さっぱり諦めるべきだ。もしも、もしも、そんな雰囲気になったら困る。  私の覚悟は決まっていない。むしろ、決まる日は来るのだろうか。 「うー」  もちろん。このままで良いとは思っていない。逃げ続けて良い問題じゃ無い。  私だって、あの逞しい胸に抱かれたいとか思うし、そういった興味がないわけじゃないんだけど。とにかく怖すぎるのだ。  立ち上がり、室内をウロウロと歩き回った。 「……勇気をださなきゃ……あっ……」  そうだ、いきなり最後まで行かなければ良いのでは?  私は閃いたアイデアに感動した。そうだ、ソウンさんは、私が嫌がっているのに、無理矢理どうにかしようなんてしない、そう……きっと!  よし、と気合いを入れてドアに手を掛け、はっと立ち止まった。部屋着にしている白とピンクのニットのワンピースの胸元を掴んだ。そして、ナイトブラとショーツがお揃いで、可愛い物で有る事を確認した。  いざ行かん!
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