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あー。
「今のは駄目です!」
「何故だ」
ピンと背筋を伸ばし、武士の様な雰囲気を漂わせたソウンさんが質問した。
「だって……今のは……なんか、あー!って感じでした」
「駄目なのか」
「駄目……駄目です! 何か恥ずかしいですもん」
「問題ない」
「じゃ、じゃあ、ソウンさんが、あーってなったら分かりますよ!」
私は、ソウンさんと向き合って正座し、ソウンさんの太股に触れた。
「ソウンさん、更紗先生に聞いたんですけど、中に入ると大変なことになるって本当ですか?」
腰を上げて、ジッとソウンさんの顔を見上げた。
「……試して良いか?」
「駄目です! だって凄い怖いし、痛そうです!」
「痛くなければ良いのか?」
「痛いに決まってます」
「……アイツが、ノエの体を思うならと、色んな物を押しつけてきた」
アイツとは、更紗先生のことだろうか。物とは……まさか、世に言うエッチなお道具とか、便利グッズだろうか。けしからんです! ちょっと見てみたいです。
「それは……まぁ、ちょっと置いておいて。まずは安全にイチャイチャしましょう」
「そうだな、じゃあ行こう」
ソウンさんが腰を上げて、私に腕を伸ばし、気がついたら抱き上げられていた。
「ソウンさん! 勝手に動いちゃ駄目です」
「番をリードするのも、雄の役割だ。君を愛している。お遊びは終わりだ」
お姫様抱っこ状態で、そんなこと言われたら、文句の言葉が言いにくい。
「えっと……あの……でも……」
動揺してブツブツと意味の無い言葉を紡いでいる間に、私はソウンさんの部屋につれこまれ、ベッドの上に寝かされていた。
あぁ、いつもより良い匂いがするのは、何ででしょうか?
頭がフワフワして、妙にハッピーな気分です。力が抜けちゃう。
「ノエ……そうだ、そのまま俺を受け入れてくれ」
覆い被さってくるソウンさんの目を見たら、逃げられないと思った。唐突に、獣人の匂いというのが体感できた。この雄は、強くて魅力的な個体。この雄が欲しい。そう思わされた。
でも、弱い人間の本能も生きてて、怖い、逃げたいって訴えている。
「怖がらないでくれ、俺は君に乱暴したりしない……君に喜んで貰いたい」
私に触れる、ソウンさんの手は、温かくて、優しかった。
彼の気持ちが伝わってくる。私を大切に思ってくれる、その心が。
「痛くしないでくださいね」
情けない顔で懇願すると、ソウンさんが微笑んだ。
そこからは、未知との遭遇だった。
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