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少年の夢
その日は不思議な夢を見た。
整った綺麗な顔をした少年が怒っている。
私は、その子と遊びたくて、必死に後を追うんだけど、少年は私に近づかれるのも嫌みたいだった。
「あっちに行けよ、ノエ」
周囲の大人にはニコニコしている少年は、大人の前では優しいのに、二人になると態度が変わった。
でも、遊んで貰うことを諦めて離れていると、怒った顔でずっと私を見ている。
私が少年とは関係の無いことで喜んだり、楽しんだりしていると、気に入らないみたいで少年がやって来て、ソレを取り上げる。
「俺は……お前のものじゃない……」
少年がよく口にした台詞の意味が、私には難しくて分からなかった。
どんなに冷たくされても、自分には少年しか居なかった。
大人の人達は、ずっと一緒には居られない。少年は、朝から晩までずっと、一緒だ。だからお化けが怖いときも、虫が嫌だった時も、何かあれば少年に泣きついた。
少年は怖い顔をして怒りながらも、結局は私を助けてくれた。
少年は大きくなるにつれて、段々と……私にも微笑むようになった。
優しくなった。
そして、その頃には……周囲の大人に牙を剥くようになった。
「今の夢……私のお兄ちゃん?」
目が覚めて、詳しく思い出そうとしても、モヤモヤと頭の中に霧がかかって駄目だった。
思い出すことを諦め、気持ちを切り替えて、ソウンさんと朝食を取った。
そして、ソウンさんが出かけて行ってから、シャワーをお借りした。
昨日は気まずすぎてシャワーお借りして良いですがと聞けなかったから。
「さっぱりしたー!生き返るよ!」
タオルで体を拭いて、更紗先生に頂いた下着をつけて服を着た。流石、更紗先生、ブラのサイズもピッタリだった。
鏡に映る、色使いの可愛いシャツワンピースを着た、自分を見つめる。
(うん、髪の毛がびちょびちょだね)
ソウンさんのお家にはドライヤーというものが存在しなかった。
そうだよね、ソウンさんの髪は軍人さんらしい、襟足もすっきり、耳も眉毛もバッチリでている短髪だから、必要ないよね。
(仕事見つけたら、安いやつ買おう!一つ、目標ができたよ)
それまでは、なんとか自然乾燥で、と思いショートボブの髪の毛をガシガシタオルで拭いた。
「よし!とりあえず、出かけよう」
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