今は昔、月に帰りし姫君ありけり

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 気づいたら、先ほどまでとは違う場所に立っておりました。 「天水、ここは?」 「天上人に追われぬよう、彼の地へと参りました」  天水はよく通る声で何事もないかのように真っ直ぐに私を見つめ告げます。  私は天水を正面から見て驚きました。  ──私の乳兄妹は、いつのまにこんなに背が高くなったのでしょう。いつの間に、こんなに肩幅も広く、力強い身体付きになったのでしょう。私の知っている乳兄妹とは全く違うのです。そして、その瞳も天上界で見てきた多くの瞳と全く違ったのです。  私が目を見開いたまま何も言わなくなってしまったので、天水は心配したのでしょう。私から少し離れ、穏やかな口調で胸の内を話してくれました。 「かぐや姫、私はずっとあなたに会いたいと思っておりました。それは叶わぬ夢と諦めていたのですが、このような機会が巡ってくるとは……与えられ、姫様が自分らしく生きていけるよう、いつまでも、どこまでも姫様の傍におります」 「天水……」  天水はずっと私に会いたいと思ってくれていたなんて、天水の瞳が感情を映し輝いていたなんて、私は全く気づいておりませんでした。それに気づき、私は急に顔が熱くなったのでございます。私はその時、天水に恋をしたのでございます。
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