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私が天上界に戻ってひと月ほどたったある日、父である王から宴への出席を命じられたました。
「どうしても出ないといけないのかしら?」
気乗りしない私は、準備をしている侍女頭の香蘭へ静かに溢しました。
「勿論でございます。此度の宴は、姫様の縁談を纏める席でございます」
香蘭は少し強めの口調で、私に釘をさします。彼女は私を見据え、なおいい募ったのです。
「それとも、また雲隠れなさって、王のお怒りを買うおつもりですか? また下界へ下ろされるおつもりですか?」
「あぁ、あれは……」
香蘭の強い視線に耐えられず、私は目を伏せました。
「わかっていただければ、それでよいのです」
この話をされると、私は言い返せないのです。私は、前回の見合いを雲隠れしたのです。それを怒った王が、私を地上へと下ろしたのでございます。
──なぜ見合いに出なかったのか?
私は父の言いなりのまま、何の感情も沸いてこない、心うちもわからない男性と夫婦となり、この先の長い人生を、唯々、過ごしていくと考えると眩暈を覚えました。生を感じることのない、死んだような日々が永遠と続くと思うと、恐ろしさから身震いがしたのです。
──しかし、もう諦めるべき時なのでしょう。これが天上界の常識であり、生を感じたいと思うこと自体がおかしいこと。
そう思い、私は小さく息を吐いたのでございます。
そんな様子を、香蘭は何の感情も映さない目で見つめておりました。
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