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「俺、トイレ行ってくるわ」
連れの指摘通りに何かに気がついた大野は、突然トイレに行くと席を立つと、BAR特有の背の高い椅子から降りた拍子に足を踏み外し、そのまま派手によろけると、フラフラとカップルの方に倒れ込み、女性のテーブルに置かれていたカクテルを盛大にひっくり返してしまった。
ひっくり帰ったカクテルの入ったグラスは、女性の横にいた男性のシャツに盛大にかかり、それを見ていた大野の連れの男が、シャツを弁償するからと言って、カップルの男を強引に店内から連れ出した。
「ちょっと大野さん。あちらの男性の方は弁償など必要ないと言っているのだから、いくら酒が入っているからと言って、無理やり弁償すると連れ出す事は無いでしょう」
店主の男は大野達の一連の行動をそう言って咎め、更に一人店内に残されて怯えたような様子の女性を気遣った。
すると大野は、自信のボケットから黒い手帳のような物を取り出すと、それを店主と怯える女性に向かって提示した。
大野が二人に対して提示したものは、警察手帳だ。
同じ頃、強引に店外に連れ出された男にも、大野の連れの警察官が警察手帳を見せて事情を聞いていた。
「君ね、いくら綺麗な女の子を口説きたくても、ああ言う事をして口説いたらいかんよ。今回は事件になる前に済んだけど、強制わいせつ未遂の現行犯ね。今パトカー来るから、そこで大人しくしてなさい」
警察手帳を提示され、初めは動揺していたカップルの男だったが、徐々に警察官に反論を始め、ついには証拠を見せろとまで言って警察官に詰め寄っていた。
だが、大野の連れの警察官は冷静だった。
証拠を見せろと声を荒げていた男は、彼にある事を指摘されると、顔を真っ青にして震え始める。
そしてその後は逆らう事なく、最寄りの警察署へと連行されて行ったのだった。
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