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「いやぁ、この度はせっかく応募していただいたのに、思いがけないハプニングでガッカリさせてしまいましたね。申し訳ありません」
そう言うと、村上は敏江の前で深々と頭を下げた。
敏江は眼の前に下げられた村上の頭頂部に驚いて、しばし見入っていた。
なんと、その頭頂部は見事にハゲていたのである。
副調整室では
「おい、村上さんてまだ若いんやろ?」
「まだ40になってないやろ。さっきのラーメン屋の兄ちゃんと同じくらいとちゃうか?」
「それにしても見事なハゲっぷりやなぁ!村上さん、笑いを取りにいったんか!」
「あーっ、カメラさんズームしとるで!」
「村上さん、身体はってはりますなぁ」
「笑わして、気分良う帰って貰おうって算段か!」
敏江はその頭をマジマジとみつめ、プッと吹き出した。
が、すぐに口元を押さえて笑いを飲み下し、
「あ、いえいえ あのお2人も長いことお互いに探しておられたのが うまく出会うことができてよかったですわ」
「私ども 今後もずっと息子さん探し続けます。必ず見つけ出してお知らせしますから待っててくださいや」
「ありがとうございます。待たせてもらいます。是非よろしくお願いいたします」
「息子さん、なにか身体的な特徴ないですか?おへその脇にスペード型のホクロがあるとか・・・」
「ホクロはないけど、顔はお父さんによく似た子でした。お父さん、ハンサムなんですよ。髪の毛は早くから寂しくなってますけどね。その点、あなたに似てるかもですわね」
「はあ、私に似たハンサムな方なんですか」
「あ、もうハンサムて言う歳でもないですけど・・・」
「駆け落ち同然で一緒にならはって、一粒種のお父さんにそっくりな赤ちゃんやったら、手放すのはさぞ辛かったでしょうなあ」
「そら・・・もう・・・泣いてる顔も笑うてる顔も・・・よう似てて・・・可愛い子やった・・・」敏江の頬を涙が伝って落ちた。
村上もポケットからハンカチを取り出して涙を拭いた。
その時 ポケットからキーホルダーが転がり落ちた。
落ちたキーホルダーを見て・・・驚く敏江。
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