逢いたい人はあなただけ

7/8
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「ちょ、ちょっとあなた!そのキーホルダー、どないしはったん?どうやってこれ、どこから手に入れはったの!」 「え?あー、これ?これ私の親の形見ですねん」 「親の形見?ってことはもう亡くなられたの?」 「はい、私、養子でして、養父母に育ててもらったんですけどね。実の親は、私がちびっこい子供の頃に2人揃って事故で死んでしまったそうなんですわ。それで遠縁の親戚夫婦が引き取って養子にしてくれましたんや。 実の親のことは何も教えてくれんかったし、墓参りも連れてってもらったことないんですけどね。よく可愛がってもろうてたから、あんまり実の親のこと聞いたり詮索するの気が引けて、何も知らんのです。けど、 このキーホルダーだけはね、母が亡くなる直前に、実の親の形見やと言うて、渡してくれましてん」  村上の顔をマジマジと見つめる敏江。 「あんた・・・名前は・・・?」 「村上ツヨシと言いますが・・・」 「ツヨシ・・・・・・」  敏江はキーホルダーと村上の顔を交互に見比べていたが、 「そのキーホルダーについてるコケシ、私の主人が彫ったものです!」  キーホルダーに手を伸ばし、 「ほら、ここのところに清って字が彫ってあるでしょ?これ主人の名前なんです!」  そしてハンドバッグをゴソゴソと探って、 「これ、私が使ってるキーホルダーやけど、ほら!これにも清って彫ってあるでしょ?」 「えーっ!?それがなんで私の親の形見になったんですか!どういうことや?」  敏江は暫く考えていたが、 「わかった!」と叫んだ。 「私そのキーホルダー、いつも手提げ袋につけてたんよ。それで、赤ん坊を乳児院に預ける時に、オムツや肌着をその手提げ袋に入れて、そのまま置いて来たんやわ!」  二人は一瞬見つめ合い、 「ほんなら!」 「ということは!」 「あなた、私のお母さんですか!生きてはったんですか!」 「まあ、大きくなって・・・ツヨシ・・・逢えた・・・逢えた・・・よかった・・・」 「お父さんもお母さんも・・・生きてはったんか!」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!