戦時の作家

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その後、宴に戻り、権太に言った言葉があれで良かったのかと自問自答し、お酒をたくさん飲みました。 そして訳が分からなくなり、我に返ったときには、駅のベンチに寝ていたのです。 十二月の夜。 外套は羽織っていましたが、体は真底、冷え切ってしまいました。 自分の行いに、ぞっとしました。 ――目が覚めてよかった。 酔って眠って凍死など、教え子たちに顔向けできない。 夜も何時になるのか。 ぼくの手巻き腕時計は、いつの間にか止まっていました。 ホームに立つのは、ぼくひとりです。 見慣れない二両編成の電車がホームに滑り込みました。 それは、流線型の鋼鉄車両でした。 ここ、知多鉄道を走る見慣れたデハ910形電車とは明らかに異なるモダンな車両に、目をみはりました。
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