第三話 驚きの涙

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 階段を上り、二年棟の掲示版を確認する。 「数学はE組か」  私は、いつもとは反対方向の廊下を歩いた。  E組の扉を開けると、数人の生徒が机に座っていた。私は目立たないように、人のいる後ろの方の席を確保した。  先生が来る前に机にテキストとノートを並べていると、ガラガラガラと豪快に扉が開いた。 「良かった!間に合った!」  その子は、大きな声と大きな歩幅で歩いてくる。  確かこの子は、涙本 光(るいもと ひかる)ちゃん。ショートヘアがよく似合う、前髪ポンパの女の子。頭が良くてはきはきしてるため先生受けは良いが、あまりにも個性的なため単独行動が多いと聞いたことがある。  どうしてそんな子が、補習に参加しているのだろう。  不思議に思っていると、光ちゃんは私の隣に座った。 「見て見て、ビーズびよよーん」  彼女はそう言い、私に眩しいくらいの笑顔を見せた。  私は戸惑い周囲を見渡す。気づいたら、近くにいた人たちの姿が遠ざかっていた。
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