The Great Pillar

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 鬼だと思った。  そいつは、普通の日本人とたいして変わらない体格と顔立ちをしていた。  ただ、額の真ん中からねじくれた角が生えていたのだ。    そのたった一人に、俺たち小銃で武装した七人は制圧された。  何をされたのかはわからない。目に見えるようなことは何も起こらなかった。前触れもなく突然、衝撃波のようなものが俺たちを襲ったのだ。冴島は胴体を両断されていた。高橋だか、誰だったか、昨夜会ったばかりの男は、上半身が消し飛んでいた。  俺自身は、たぶん食らっていない。吹き飛ばされて後頭部から出血しているが、それはそいつの術(そう、術とか技とか言うべき何かだ)を受けたせいではない。  動けなかった。  死んだふりをしてやり過ごそうと思ったわけではない。  脳震盪か何かだろう。俺は身体のコントロールを失っていた。    そういえば衝撃波が来る直前、オゾン臭と、キーンという耳鳴りのようなものを感じた。今はただ静かだ。  仰向けに倒れて身動きできない俺の視界に入ってくるのは、靄に包まれたピラー中心軸の光の柱だった。  靄がときどき流れて、向こう側が見える。向こう側は空ではない、地面だ。  自分がとんでもない異郷にいることを、今更のように思った。       
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