第四章「蒼井風花の復讐」-4-

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◇  真夜は巧みな話術で他人の心を操る。ただ、持続的な効果はない。たいていの人間は少しすると彼女の本性を知り、離れていく。  だが、それが患者相手となると確かに対応が難しい。患者は信者のように真夜を崇める。病で気持ちが落ち込んでいる相手の隙をつき虚言で自分の虜にさせ、操る。  だから風花は患者を守らなければならなかった。  ある日を堺に、真夜はやけに朝早く出勤し一人で患者のケアに回るようになった。朝の食事介助や配薬、点滴交換などで忙しい夜勤看護師にとっては真夜が手伝ってくれるので、完全に信用はしていないが助かる部分もあるのだと言っていた。  おかしいと思ったが、やはり真夜は風花を嵌めるために一芝居打っていた。  その日の担当の患者の部屋に行くと、なぜか処置を断られたのだ。 「蒼井さん、私の火傷をきたないから手当したくないって言ってるんでしょう? いつも丁寧で親切な看護師さんだと思ってたのに、裏切られた気持ち」  そう言って患者はベッドに顔を伏してしまった。風花の背後から真夜が現れ、「かわいそう! 私が代わりに傷の手当てをしてあげますね。きっと良くなるから、元気出して」と肩に手を置いた。  間違いなく朝、他の看護師がいないのを見計らい病室を訪れ、患者に風花の評判を下げる虚言を言い放っているのだ。  しかし風花は引かなかった。軟膏やガーゼの乗ったトレイに手を伸ばした真夜を手で制した。 「私の大切な患者です。適切なテープの貼り方も知らないあなたには任せられない」 「は……?!」  真夜の顔が引きつった。
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