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「テープの貼り方に、技術なんてないでしょ?」
「技術がいらないと思っている時点で、看護の基本をわかってない」
ぴしゃりと言ってのける。その勢いに、ベッドに顔を伏していた患者が唖然と顔を上げた。
「たしかに蒼井さんに処置をしてもらったあとは、傷の痛みが違う。他の看護師さんの時はテープの貼り方がキツイ時があって、蒼井さんによく貼り替えてもらうのよね」
他の看護師さんとは、真夜のことだろう。彼女は傷の上にガーゼを当てテープで止めればいいと思っている。患者とコミュニケーションをとるのに夢中で、他の看護師のケアの仕方を目で見て学ぼうとしないからだ。
「……ごめんなさい。蒼井さんが他人のこと悪く言うような看護師さんじゃないわよね。やっぱり処置は蒼井さんにやってほしいわ」
当然、真夜が自分の味方に引き入れようとした患者は他にも大勢いた。しかし、そのほとんどが「この病棟で一番信頼できる看護師さんは蒼井さんだ」と言ってくれた。
それでも中には「蒼井さんが患者の悪口を言ってる」「犯罪歴があって、少年院にいたことがあるらしい」と言っている患者もいたが、すぐに「ごめんな。なんかおかしくなってた」と謝ってくれた。
後に、杵島がたびたび病棟を訪れ、風花の名誉を回復するようなフォローをしてくれていることを他の看護師から聞いて知った。患者は何より医者の言葉を信用する。そのうえ、皮膚科病棟の患者の間では、心筋梗塞の症状を見逃した古谷の誤診に気づき、患者の命を救った最も信頼できる医者であると以前から評価が高かった。だから杵島のフォローはありがたかった。
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