第四章「蒼井風花の復讐」-4-

7/7

305人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
◇  思い通りにはいかない事態に、真夜は相当苛立っていた。  二人きりになった更衣室で、真夜は突然牙をむき出しにしてきた。 「私の方が年上だってわかってんのかよ? 先輩を敬えよ」  顔が歪んで、声色も低くなっている。しかし風花は怯まなかった。 「年齢は関係ない。看護師としての実力は私の方が上。だから上司が私を指導者として指名したの」 「ずいぶんと偉くなったもんだねえ。アンタ、前は私に指導されてビクビク怯えてたじゃん。男まで取られて、超絶みじめだったよねえ」  間違いなく愛奈のことだ。  もしかすると真夜は、自分のことを愛奈だと勘違いしている?  どういうことだと風花が黙って考え込んでいると、なぜか勝ち誇ったように真夜は笑った。 「アンタ、蒼井風花なんて名乗ってるけど、本当は愛奈なんでしょう? 偽名使ってまで颯太追いかけてくるなんて、頭おかしいよね。てめえが病院かかれよ」  偽名? ますます真夜の言っている意味が分からない。 「愛奈は私の双子の姉。私は風花だけど?」 「嘘つくなよ。ちゃーんとその手の輩から聞いてるんだ。このことが病院に知れたら、大問題だよねぇ? 成りすましだもんね」 「言いたければ言えば?」  風花が堂々と言葉を返すと真夜はグっとさらに顔を歪めた。もうとても見ていられない、般若のような形相だ。 「颯太と寄り戻せるなんて考えんなよ。絶対にまた、地獄に落としてやる」  真夜は断固として風花が愛奈と信じて疑わない姿勢を貫く気だ。  風花は反論することすら面倒になり、何も言わずに更衣室を後にした。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

305人が本棚に入れています
本棚に追加