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◇
警察官が任意という名のもとに真夜を連行してすぐ、意外な人物が三人の前に現れた。
御堂だった。
彼は冷静な眼差しを三人へ向け、黙って背を向けてしまう。
ついてこい。そう背中が語っているのに気付き、風花は杵島と顔を合わせる。
一方の片瀬は、もう立っているのが精一杯といった様子で壁にもたれかかっていたが、気力を振り絞り、歩き出す。
皮膚科病棟を離れ、移植外科の研究室へやってくる。
「ジイサンもあの女のこと見張ってたんだな。警察が来るタイミングが早すぎた」
杵島は身内なので遠慮なく言葉をかけるが、風花と片瀬はさすがに何も言えずに黙っていた。
警察の登場が早すぎた。確かにそれは風花も感じていた。そして確信した。成りすましの情報を真夜に与えたのはきっと御堂だ。その情報を鵜呑みにし、真夜は嫉妬の情を暴走させてしまったのだろう。
「まあ、金輪際こんなことはごめんだ。絶対に患者の安全を守れるという保証はなかった」
それは全員そう思っているであろう。真夜に止めを刺すためとはいえ、リスクが高すぎた。
御堂と風花がこうして対面するのは初めてのことだ。
この男が、杵島の血縁者。
そして愛奈に自分の孫娘の心臓を移植した男。
「きみは?」
御堂は並んだ三人をゆっくりと見渡し、風花の前で視線を止めた。
私?
「きみはどっちだ?」
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