313人が本棚に入れています
本棚に追加
「これは?」
片瀬が不可解そうにその封筒を見つめる。
「愛奈が療養している施設の……面会許可証が入ってる」
「……」
数日前、御堂が風花にくれたものだった。
『愛奈はここで療養生活を続けている。……これまで誰との面会も私が許していない。本当に愛奈を幸せにしてくれる相手が現れたら、これを渡すつもりでいた』
療養という名目のもと、愛奈は御堂に匿われていた。それは愛奈の意思なのか、それとも御堂の独断だったのかわからないが、きっと愛奈は元気で過ごしているのだろう。穏やかな御堂の態度を見ればわかる。
「きみが渡されたのだろう? それなら、きみが愛奈に会いに行く権利があるんじゃ」
片瀬は明らかに動揺していた。
「違う。きっと御堂教授は、私の手からあなたの手に渡ることを、信じている」
幸せにしてくれる相手。それは片瀬なのだと、ようやく御堂は認めてくれたのだ。
風花は真っすぐに片瀬へと優しい眼差しを向け、それから封書と共に二体の人形を差し出す。
以前、愛奈に渡してほしいと片瀬が風花に渡した手作りのサンタクロース、そしてもともと愛奈が持っていたサンタクロースだった。
それでも彼は、迷っていた。
愛奈に会う資格がないと片瀬は言っていた。それだけでなく、きっと怖いのだろう。
もし、愛奈に拒絶されたら――と。
風花は微笑み、そして真っすぐに片瀬へと優しい眼差しを向けた。
時々自分が愛奈の想いと同期するような不思議な錯覚。それは、きっと次の言葉を告げるため……
『早く私に会いに来て。私はずっと、あなたを待っています』
最初のコメントを投稿しよう!