最終章

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「これは?」  片瀬が不可解そうにその封筒を見つめる。 「愛奈が療養している施設の……面会許可証が入ってる」 「……」  数日前、御堂が風花にくれたものだった。 『愛奈はここで療養生活を続けている。……これまで誰との面会も私が許していない。本当に愛奈を幸せにしてくれる相手が現れたら、これを渡すつもりでいた』  療養という名目のもと、愛奈は御堂に匿われていた。それは愛奈の意思なのか、それとも御堂の独断だったのかわからないが、きっと愛奈は元気で過ごしているのだろう。穏やかな御堂の態度を見ればわかる。 「きみが渡されたのだろう? それなら、きみが愛奈に会いに行く権利があるんじゃ」  片瀬は明らかに動揺していた。 「違う。きっと御堂教授は、私の手からあなたの手に渡ることを、信じている」  幸せにしてくれる相手。それは片瀬なのだと、ようやく御堂は認めてくれたのだ。  風花は真っすぐに片瀬へと優しい眼差しを向け、それから封書と共に二体の人形を差し出す。  以前、愛奈に渡してほしいと片瀬が風花に渡した手作りのサンタクロース、そしてもともと愛奈が持っていたサンタクロースだった。  それでも彼は、迷っていた。  愛奈に会う資格がないと片瀬は言っていた。それだけでなく、きっと怖いのだろう。  もし、愛奈に拒絶されたら――と。  風花は微笑み、そして真っすぐに片瀬へと優しい眼差しを向けた。  時々自分が愛奈の想いと同期するような不思議な錯覚。それは、きっと次の言葉を告げるため…… 『早く私に会いに来て。私はずっと、あなたを待っています』
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