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片瀬は風花から封筒と人形を受け取る。その手はひどく震えていた。
恐る恐る封筒に書かれた住所を確認し、そして風花と杵島に向かって頭を下げた後、迷うことなく走り出した。
きっときっと、あの二人はまた愛し合える。
そして二人が出会ったあの町で、また静かな生活を始めるのだろう。
「大地、いつか……幸せに暮らしている愛奈と片瀬先生に会いに行こうね」
「ああ。俺たちも幸せになるぞ」
杵島も強く頷き、風花の肩を抱き寄せる。
やがて、片瀬の姿は人混みに紛れて見えなくなった。
その姿を見届けた風花と杵島の二人は、片瀬とは反対の方向へと背を向け……振り返ることなく前を向いて歩き出した。
『蒼井風花の復讐』――――(了)
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