第2話 あたし(千晶)

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この道は、小学生の頃の通学路。 延々と続く広い水田と、大きな河に挟まれた道だ。 助手席の窓の外、ガードレールの向こう側に河が流れている。 「あれっ? 河の水……」 河の流れは穏やかだったが、あたしの記憶よりも水量が多い。  「上流で大雨が降ったようね」 今年の夏は、日本中でゲリラ豪雨や爆弾低気圧が起きている。 「ママ。これからどこに行くの?」 「久しぶりに家に帰って掃除をしたの。 ずっと日本にいなかったからね。それでね。 家で千晶と一緒に昼食を作りたいと思っている」 ――家……。あたしたち家族が住んでいた家。 離婚の時、財産分与でママだけのものになった家。 自分勝手、鈍感! 押さえていた怒りが心を満たした。 フロントグラスから空を見上げると、いつの間にか真っ黒な雲に覆われていた。 稲光がパッと走った。
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