第2話 あたし(千晶)

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ビー玉のような氷の塊が、とめどなく車のフロントグラスにぶつかって砕けた。 たちまち前の風景が全く見えなくなった。 氷の塊の大きさがビー玉からげんこつに変わった。 ママは、車を急停車させた。 ビシッと、ものすごい音がして助手席側のワイパーが吹き飛んだ。 悲鳴をあげ、思わず運転席のママに抱きついた。 ママはあたしをかばうように、抱きしめた。 しばらくして、雹が車体を打つ音が弱くなっていった。 「もう、大丈夫よ」 「うん……」 小さく返事をして、ママから離れて助手席に身を戻した。 ママも緊張が解けたのかハンドルに額を付け、フゥとため息を吐いた。 あたしは、ヘッドレストに頭をもたれて、ぼんやり外をながめた。 路上には、雹が真っ白に降り積もっている。 空にはさっきまでの悪魔のような黒雲はなくなり、形の丸い大きな雲が金色に輝き、空に浮かんでいた。 見たこともない美しさに思わず声が漏れた。 「きれいな雲」 ハンドルに額を付けていたママも顔を上げ、空を見た。 金色に輝くの雲が、回りの雲を飲み込むようにゆっくりと回転し、さらに大きくなっていった。 ママが叫んだ。「Mamma!」
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