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ビー玉のような氷の塊が、とめどなく車のフロントグラスにぶつかって砕けた。
たちまち前の風景が全く見えなくなった。
氷の塊の大きさがビー玉からげんこつに変わった。
ママは、車を急停車させた。
ビシッと、ものすごい音がして助手席側のワイパーが吹き飛んだ。
悲鳴をあげ、思わず運転席のママに抱きついた。
ママはあたしをかばうように、抱きしめた。
しばらくして、雹が車体を打つ音が弱くなっていった。
「もう、大丈夫よ」
「うん……」
小さく返事をして、ママから離れて助手席に身を戻した。
ママも緊張が解けたのかハンドルに額を付け、フゥとため息を吐いた。
あたしは、ヘッドレストに頭をもたれて、ぼんやり外をながめた。
路上には、雹が真っ白に降り積もっている。
空にはさっきまでの悪魔のような黒雲はなくなり、形の丸い大きな雲が金色に輝き、空に浮かんでいた。
見たこともない美しさに思わず声が漏れた。
「きれいな雲」
ハンドルに額を付けていたママも顔を上げ、空を見た。
金色に輝くの雲が、回りの雲を飲み込むようにゆっくりと回転し、さらに大きくなっていった。
ママが叫んだ。「Mamma!」
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