第3話 運命

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第3話 運命

――死神が、追いかけてきた。 「えっ? 今、ママって言ったの?」 何も知らない千晶が、聞いてきた。 「あの雲は竜巻になるのよ! ごめん、あなたを巻き込んだ。 あの雲は、わたしを追いかけてきた」 突然風が強く吹き始め、地面に落ちていた雹が舞い上がり、車のボディを叩いた。 乳房雲は逆円錐に変わり、その先がドリルのように急速回転し、地上に広がる水田に向かってどんどん伸びていく。 真下の水田から土色の水しぶきと共に稲や土くれが回転しながら舞い上がり、雲の先端に吸い込まれた。 インドで遭遇した時より小ぶりだったが、竜巻が今、目の前に出現した。 「ママ、こっちに来る!」 わたしは、急いでキーを回し、エンジンをかけようとしたが、ボンネットから、キュルキュルキュルと弱々しい音がしただけだった。 半年ぶりに乗った古い軽自動車だ。 今朝もエンジンがかからず、隣人の車のバッテリーにケーブルを繋いでもらって、ようやく走ることが出来たのだ。 深く息を吸って吐いて、それからもう一度キーを回したが掛からない。
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