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パパァーンと突然、クラクションの音が聞こえた。
「ママ、前!」
メーターパネルを見ていたわたしは、千晶の声に顔を上げた。
前方から大型トラックが、路上に積もった雹の上を滑るように走ってくる。
ブレーキが効かないのか、運転手の顔が恐怖に引きつっていた。
――ぶつかる!
瞬間、ゴゴゴーッと、ものすごい音が響き渡り、ふわっと、車が浮くのが分かった。
――空中に巻き上げられている!
窓の外、迫ってきたトラックが、スーゥッと下にさがっていった。
うるさかった風の音が止み、足と尻が浮いた。
シートベルトのおかげで、頭が天井にぶつかることはなかったが、わたしには何が起きているか分かった。
――落ちて死ぬ! 地面に叩きつけられて、千晶も死んでしまう。
次の瞬間、ものすごい衝撃を感じたが意識は途切れなかった。
水しぶきが高くあがり、フロントグラスや窓から全ての景色を消した。
千晶の悲鳴が聞こえた。
――河まで飛ばされたのか?
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