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叩きつけられた三点から、ものすごい勢いで河の水が噴入してきたが、あっという間にフロントグラスが砕け散り、ドッと河の水が車内にあふれた。
危うく息を止めた。
もう、あたしの全身は完全に水没していた。
濁った水の中、右ひじをつかむ手を感じた。
ハッと右を見ると、ママがフロントグラスに開いた大きな穴から、外に出るようにジェスチャーをしていた。
ママは、あたしの上半身をフロントグラスの穴に導き、押し出した。
車から水中に出ると、水中の速い流れを感じながら、ドンドン体が上昇していくのが分かった。
――ペットボトルの浮力のおかげ。
あっ、あたし、ペットボトルを二本持っている。ママ!
焦って下に視線を移すと、ぼんやりと車の輪郭を見つけた。
一つの影が、あたしの方に昇ってきた。
――ママだ!
そう思った瞬間、あたしの頭は水面から飛び出し、河と風の音が耳に轟いた。
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