第5話 抗う

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第5話 抗う

ペットボトルを千晶に渡し、息を止めて水中に沈んだ。 流れの早さに恐怖を感じたが、パニックを起こすまいと自分に言い聞かせた。 息が苦しくなる前に、水をかいて水面から高く飛び出る。 その一瞬で息を吸い、すぐに息を止める。 体は水中に戻り、体勢を整えてから、また水面から飛び出て素早く息を吸い止める。 ひたすら繰り返す。 主婦だったころ、通っていたスイミングスクールで習ったサバイバルスイミング。 何度も何度も繰り返したが、だんだん水面から高く飛び出すことが出来なくなってきた。 限界だった。 心が折れそうになり、このまま沈んでしまいたいと思った。 ――もうだめだ。でも、もう一回だけ飛ぼう。
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