第5話 抗う

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必死で水をかいて、水面に飛び出すと、突然、人が青空から落ちてきた。 その人は一瞬で、わたしの体を空中にすくい上げた。 「両手両足で、私にしっかり、しがみついて」 ヘルメットにオレンジの服。消防隊員だ。 言われるままに、しがみついた。 消防隊員の体は、川の両岸に張られたワイヤーロープで支えられていた。 「千晶! 千晶は助かりましたか!」 「今は静かにしてください!」 ワイヤロープが引っ張られ、わたしと消防隊員は河岸に着地した。 「立ち上がらないでください。今、ストレッチャーに載せますから」 「千晶は無事ですか!」 「お嬢さんですね。無事ですよ。 あなたより先に救助されて、今、救急車で病院に向かっています。 あなたのことも、同じ病院にお連れします」
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