第2話 あたし(千晶)

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古ぼけた赤い軽自動車があたしの正面、駅前の自動車乗降所に止まった。 助手席の窓が下がり、運転席から身を乗り出した顔が見えた。 「千晶、おまたせー」 電話では、時たま聞いていたが、肉声ではほぼ一年ぶりに聞くママの声。 真黒に日焼けした化粧っけのない顔や短髪にした髪は、あたしが知っている以前のママのイメージではなかった。 一応、顔に笑みを浮かべて、ママに小さく手を振った。 「早く乗って」 ママに促され、助手席に乗りドアを閉めた。 車がグンッと前に動き出した。 「久しぶりね。暑かったでしょう。 ドリンクホルダーにあるコーラ飲んでね」 ――ママ。あたしはもう、炭酸飲料は飲んでいないんだよ。 運転席と助手席の間のドリンクホルダーに置かれた二つのペットボトルを見た。 ひとつはママのお気に入りのウーロン茶。 あたしは助手席側に置かれているコーラのペットボトルを開け、一口飲んだ。 そして、もう会話が尽きた。
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