12人が本棚に入れています
本棚に追加
2
信じ難い光景に
開いた口が塞がらなかった。
なぜ?今にでも溢れんばかりの
紙幣をあの小さなポケットから出せるんだ?
俺は顎をつまむようにし
まるで名探偵のような出で立ちで思考を巡らせる。
田口はその様子を見て
「お前は相変わらず納得できない事象があると、とことんまで考え出すな」
首を横に振りながら
呆れた表情を浮かべる。
手に握られた紙幣達が
風になびいて
ひらひらと踊りだす。
その中の一枚が突然の突風によって
田口の手の中から旅立った。
「あっ」
俺は意図せず声を漏らし
縦横無尽に空間を浮遊する
紙幣を手を伸ばしながら
追いかける
だが儚くも
紙幣は二人の元から遠ざかっていく。
「そう焦んなよ」
田口はひひひと
歯を見せて笑いながら
またポケットに突っ込み
次に手が見えると
最初の量よりも
2倍、3倍もの1万円札が
握られて出てきた。
最初のコメントを投稿しよう!