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信じ難い光景に 開いた口が塞がらなかった。 なぜ?今にでも溢れんばかりの 紙幣をあの小さなポケットから出せるんだ? 俺は顎をつまむようにし まるで名探偵のような出で立ちで思考を巡らせる。 田口はその様子を見て 「お前は相変わらず納得できない事象があると、とことんまで考え出すな」 首を横に振りながら 呆れた表情を浮かべる。 手に握られた紙幣達が 風になびいて ひらひらと踊りだす。 その中の一枚が突然の突風によって 田口の手の中から旅立った。 「あっ」 俺は意図せず声を漏らし 縦横無尽に空間を浮遊する 紙幣を手を伸ばしながら 追いかける だが儚くも 紙幣は二人の元から遠ざかっていく。 「そう焦んなよ」 田口はひひひと 歯を見せて笑いながら またポケットに突っ込み 次に手が見えると 最初の量よりも 2倍、3倍もの1万円札が 握られて出てきた。
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