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夢風船
きみは覚えているだろうか……
まだ空が高く澄みわたっていた頃のこと
誰に聞いたわけでなく少女は知っていた
自分のうえにある、このおおきな空は
知らぬ誰かと繋がっているのだということ
ぱんぱんに膨らんだほっぺの空気を
もらった風船へと送り込む……、そう
まるで夢とか希望とかこの胸の中にある
言葉には表せないような、期待とか……
そんな物を託すかのように詰めこんで
紐のさきには小さな紙切れ……
雨でぐちゃぐちゃにならないように
幼心にそんなことを考えビニールで包む
風よ吹け早く吹け、もっともっと強く吹け
夢託された赤い風船は少女の手から空へ
行く先が気になり追いかけた夕暮れ
あのおおきな山をも越えていけと祈る瞳
少女の手から毎日まいにち飛び立つ風船
いつかきっとまだ見ぬ土地の知らない誰か
そんな人から返事がくると信じていた……
ふと空を見上げ白い雲に思わずくすり笑う
幼かった少女の夢とか希望とかそんなもの
まだこの空を漂っているのだろうか……
『わたしとおともだちになってください』
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