君と、どこへ

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 ボクの団地は五階建。これでも四十年も前はそれはそれは立派でキレイな団地だった。当時のボクは足腰も強かったから家のある四階まで続く階段なんかヒョイヒョイ昇り降りしていたけれど、今はよっこらしょ、どっこいせの掛け声と一緒に昇り降り。今日は手押し車の中に入ってたビニール袋がおむすびころりの如く階段を転がって、卵と納豆のパックが壁に当たってバーンと破砕。  しまったぁ、と思ったボクは十年前から愛用しているパカパカ型のらくらくホンを取り出し、激安スーパーマルセンに電話を一発。 「お宅で納豆と卵を買った谷田だけどね、中身開けたらえらい潰れていてね。悪いけど、交換してくれないかね? え? カウンターがなんて? いやいや、そちらが持って来てくれたらいいの。そう、ボクが行くんじゃなくて、うちに持って来て。それが「当たり前」ってやつでしょ? 常識でしょう? あんたら商売人なんだから、それくらいの常識はあるでしょう?」  よし、本日もこれにて一件落着。これで今日も食事にありつける。
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