君と、どこへ

5/16
前へ
/16ページ
次へ
 手押し車の中に妻・幸代ちゃんの位牌が入っていることを確認して、朝の四時に家を出る。今日も隣駅までハッスル散歩をして、早いうちからベンチをゲットするのだ。朝の六時を過ぎると地主を名乗る生意気な老人がやって来て、鳩に餌をくれるためにベンチを占拠するから早く行かなくてはならない。  散歩の間中、ボクは手押し車を押しながらずっと幸代ちゃんに話し掛けている。 「ほら、冬の花が咲いているよ。キレイだなぁ、これの名前を知ってるかい? え、シクラメンっていうのかい。幸代ちゃんは何でも知っていて凄いねぇ」  ボクは全然モノシリじゃないから、こうやって知らないものがある時はいつも幸代ちゃんに訊ねてみる。  
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加